日帰り群馬リラックス行 (2013.1.6.)

 2013年の正月はかなり忙しく、松が明ける頃にはそろそろ疲れが出てきていましたので、今日は一日遊んできました。遊びに出かけるのではまた疲れるのではないかと思われるかもしれませんが、前にも書いたとおり、私は列車に乗っていればけっこう癒されるたちで、リフレッシュを図るには汽車旅がいちばんです。
 ありていに言えば、前年の年末に関西に行った時に使った青春18きっぷが、まだ2区画分残っていたので、それを使い切りたいと考えたのでした。使用期限が1月10日までで、それまでにマダムとふたりで出かけられる日を考えると、今日6日か明日7日しかなく、今年はまだ恒例の七福神めぐりができていなかったので、それを「7」の縁起にかけて7日におこなうことにし、6日に18きっぷを使い切ることにしたわけです。
 マダムの希望で、群馬県に行くことにしました。マダムのお目当ては高崎でパスタを食べることにあったようですが、その他、日帰り湯に立ち寄るということも言い出しました。
 「群馬県は温泉県で、日帰り湯もあっちこっちにあって、みんなしょっちゅう立ち寄ってるから、群馬県人は頻尿が少ないんだってよ」
 頻尿というほどではなさそうですが、夜中にトイレに起きることのあるマダムがそう言うので、日帰り温泉を探してみました。マダムは高崎近辺で立ち寄ることを考えていたようですが、高崎に往復するだけでは18きっぷがもったいないので、もう少し先に無いかと思ったのでした。
 吾妻線小野上温泉という駅のすぐ近くに、日帰り湯があるようです。吾妻線は湯けむりラインと称しても良いほどに沿線に温泉が多い路線ですが、四万温泉にしろ沢渡温泉にしろ、花敷温泉にしろ川原湯温泉にしろ、草津温泉にしろ万座温泉にしろ、駅からは少々遠く、バスやタクシーに乗らなければならないという問題があります。その点、小野上温泉だけは、地図を見ると本当に駅前と言って良い位置に温泉施設があるようなので、そこまで足を伸ばすことにしました。
 さらにマダムは、
 「『ガトーフェスタ・ハラダ』の本店に行きたい」
 などと言い出しました。
 なんだそれは、と首をひねりましたが、近年東京のデパートなどにも進出している高級ラスクの店だそうで、そういえば京王百貨店などで行列ができているのを見たことがあります。その本店が高崎市なのだそうです。
 調べてみると、最寄り駅は高崎ではなく、そのふたつ手前の新町で、駅から国道17号を少し南に戻る感じで歩いて1キロかそこら、ほとんど群馬県と埼玉県の県境である神流川(かんながわ)のほとりと言って良いような場所に、かなり広大な本社ビルが建てられているようです。なぜかコンサートのできるホールなども備えている様子です。買い物の他、工場見学などもできるらしいので、マダムの希望を計画に加えることにしました。

 9時30分少し前、川口駅の有人改札口で、青春18きっぷの券面にスタンプをふたつ捺して貰ってプラットフォームに出ました。一旦赤羽に出て、そこから快速「アーバン」で北上します。赤羽駅では埼京線湘南新宿ラインに乗り換えることが多く、上野発着の高崎線・東北線列車が停まる3・4番線に昇ることが滅多に無いので、私もマダムもつい階段を行き過ぎてしまったりしました。
 電車は残念ながらロングシートばかりの車輌でした。首都圏の中距離電車では、ボックスシートのある車輌を連結しているかどうか、あらかじめ知る方法が無いので不便です。同じ時刻の列車でも日によって違ったりもするので、始末が悪いこと甚だしいものがあります。
 とはいえ、今朝の北行電車はごく空いていて、長いシートをふたりで独占しているような状態でしたから、車中で弁当などを食べようと思わない限りはそこそこ快適です。外の風は冷たいものの車内にさしてくる陽光はうららかで、早くも気持ちが穏やかになってくるのを感じました。
 それにしても駅ごとにどんどん空いてくる感じだったので、ややいぶかしく思っていたら、なんとそこは籠原(かごはら)駅で切り離されてしまう車輌だったのでした。高崎線電車にしろ湘南新宿ラインにしろ、10輌編成の場合と15輌編成の場合がありますが、15輌の場合はほぼ確実に籠原以北が切り離しとなります。あわてて後部の高崎行き車輌に移りました。
 北上するにつれて山が近くなります。手前に真っ白に雪化粧した山が見えましたが、あれは榛名山でしょうか。背後の山々がそこまで白くなっていないので、なんだか不思議な気がしました。
 11時05分に新町に到着しました。駅名板の「新町」という文字の前に、「ググッとぐんま」キャンペーンのステッカーが貼られており、なんだかぱっと見3文字の駅名であるかのように見えたもので、下車する動作が少し遅れました。しかも熊谷以北では扉の開閉がボタン式になって、自動ではないものですから、もう少し遅れていたら下り損ねたかもしれません。

 新町駅で乗降したのは、実ははじめてではありません。一昨年の秋、奥秩父の両神から神流川までウォーキングした際、帰りに乗ったバスが新町駅行きで、この駅から電車に乗ったことがあります。さほど特徴のある駅というわけではありませんが、「群馬県最南端の駅」というタイトルを自称していました。「自称していました」と少々冷たい書きかたをしたのは、八高線群馬藤岡駅のほうが明らかに南にあるからです。さらにJR以外も含めれば、上信電鉄の先端のほうはもっと南で、本当の最南端は終点の下仁田駅となります。新町駅の「最南端」はいささか僭称と言うべきでしょう。
 駅前ロータリーを出るとすぐに17号が通っており、右折してしばらく南へ歩きます。警察の検問所といういかめしい塔が立っているところを過ぎると、ガトーフェスタ・ハラダの本社ビルがありました。なんだかギリシャ遺跡の円柱みたいな装飾を並べた、いやに派手な建物です。2棟あって、右側が店舗、左側が工場なのでした。工場の1階にホールもあります。
 ただ、残念なことに、工場見学は平日のみとなっていました。考えてみればそれも当然で、土休日には工員も働いていないでしょう。私もマダムも、ここのサイトはよく見たはずなのに、工場見学が平日だけだという記述を見逃してしまっていたようです。
 店舗のほうは、玄関と店の奥にお茶のサーバーが置かれており、お客が自由に飲むことができるようになっていました。以前はケーキまで供されたという話を聞きましたが、これだけでも充分です。水・煎茶・紅茶・コーヒーのそれぞれホットとアイスが出るようになっており、クリームポーションや砂糖はもちろん、備え付けの紙コップには蓋もついています。
 広い駐車場には多くのクルマが駐まっていました。店の中ではお客がかなり長い行列を作っています。まだ松の内の日曜ということもあり、お年賀などに買ってゆく人が多かったのでしょう。
 もともとは「原田パン店」という冴えないパン屋に過ぎなかった店が、売れ残りのフランスパンを加工してラスクにして売り出したら大当たりしたというのがガトーフェスタ・ハラダの興りです。ラスクといういわば「駄菓子」を、開き直ったかのように高級菓子風に飾り立てて売るという発想がすぐれていたものと思われます。どう考えても原材料費はさほどかかっていないようなので、これだけ当たればボロ儲けでしょう。ビジネスチャンスというのはどこに転がっているかわからないものです。
 工場見学をしなかったのに、行列に並んで買い物をしていたら、かなり時間が過ぎてしまいました。新町駅に戻ると、予定していた電車がちょうど発車するところで、しかも改札から跨線橋を渡ってゆかなければならないプラットフォームからの発車で、とても間に合いません。結局1本乗り遅れです。

 20分ばかり新町駅で待ち、次の電車に乗りました。高崎までは10分ほどです。
 いつの頃からか高崎はパスタの街ということになっていて、街じゅう至るところにパスタ屋が店を構えています。この種の、その土地の伝統とはあんまり関係のない、町おこしのための名物づくりは、あちこちの地方都市で盛んにおこなわれています。眉をひそめる向きもあるでしょうが、私はそれほど目くじらを立てるつもりはありません。地方都市をほうぼう旅して、シャッターの下りた商店街などもよく眼にしている身としては、たとえ伝統と無関係ではあっても、それで多少なりとも街が活性化しているのなら、たいへん喜ばしいことだと思わざるを得ません。
 以前、前橋にあるマダムの祖父母の墓参りをする時に高崎に立ち寄った際は、あまり時間が無くて、駅ビルのパスタ屋で済ませましたが、今回は駅の外の店へ行きたいとマダムが希望したので、充分な時間をとるとともに、下調べをしてきました。2人組限定の「ペアセット」なるコースを供する店が駅の近くにあったので、そこに寄ります。サラダ・ピッツァ・パスタ・デザート・飲み物のコースで値段もそう高くありません。
 出てきた料理は値段のわりにはかなりボリュームがあり、東京ではなかなかこの量は出さないと思われました。地方で食事をすると、量に驚くことが少なくありません。
 ちょっと脇道に逸れますが、日本のイタリアンレストランではピッツァとパスタをセットにして供する店がよくありますけれども、イタリアに行くとまずそういうことはありません。というか、まともなリストランテでピッツァなどを出す店は滅多に無いのでした。イタリアでは、ピッツァはあくまでもオヤツなのであって、ピッツェリアという専門の軽食屋で食べるのがあたりまえです。パスタとピッツァを一緒に出すというのは、日本で言うなら寿司とお好み焼きを同じ店で出すみたいなもので、イタリア人からするとかなり違和感を感じるようです。イタリアの「食事」は基本的に、アンティパスト(前菜)ののち、第一皿(プリモ・ピアット)、第二皿(セコンド・ピアット)が出て、それからデザートとコーヒー(エスプレッソもしくはカプチーノ)という4皿構成が普通です。パスタはプリモ・ピアットであり、セコンド・ピアットには肉料理や魚料理が来るのが標準ですが、日本人客、特に女性などはアンティパストとパスタまでで満腹してしまう人が多く、せっかくのメインディッシュたるセコンド・ピアットを食べ残すというケースがよく見られます。カプレーゼ(トマトとモッツァレラチーズ)はセコンドにできるので、少食な人にはこれをお勧めします。そしてアンティパスト(たいてい食べ放題)をあまり食べないでおくのがコツです。
 さて、料理もなかなか結構でしたが、店の構えも雰囲気が良く、マダムは
 「なんだかナポリあたりのお店に来てるみたい」
 とご満悦でした。もっとも彼女はナポリに行ったことはなく、テレビの旅番組で見たくらいです。私も、パレルモは知っていますがナポリは未経験です。

 駅ビルで少し買い物をしたりして、15時10分の電車で小野上温泉に向かいました。107系という旧国電を改装した電車で、もちろんロングシートであり、ちょっとがっかりです。吾妻線には113系(昔の中距離型でセミクロスシート)電車も走っており、どちらが来るかは運次第みたいなところがあります。私たちはハズレだったというわけでした。
 小野上温泉は、上越線との分岐駅である渋川から4つめですから、吾妻線にちょっと入っただけのあたりです。この先に、中之条とか、長野原草津口とか、万座・鹿沢口とか、著名な温泉地への基地となる駅がたくさん並んでいます。
 平成4年に新しくできた駅で、プラットフォームは新駅らしい簡易な造りになっています。もちろん片面単線の無人駅(正しくは簡易委託駅)です。
 小野上温泉センター「さちのゆ」は本当に駅前です。むしろ、この温泉センターのために駅が新設されたのではないかと思われるほどに、他にはなんにもありません。逆に、駅前が温泉という駅はわたらせ渓谷鐵道水沼駅ほかいくつかありますが、その温泉施設がこんなに大きいところは少ないかもしれません。
 それでも、電車で訪れる人は多くなくて、小野上温泉駅の一日平均乗車人員数は30〜40程度に過ぎません。大半はクルマで立ち寄ります。そのため駐車場は実に広大です。その広大な駐車場がかなり埋まっていて、相当に混んでいることが予想されました。
 入浴料は滞在時間によって何段階かに分かれていますが、2時間までだと400円で、うちの近くの普通の銭湯よりも安く済みます。スーパー銭湯になるとこの倍くらいとられますから、さすが温泉地だと格安感を噛みしめます。
 スーパー銭湯ほど多種類の浴槽があるわけではありませんが、それでも温度の違う2種類の内湯、それに露天湯とサウナ、水風呂が備わっており、1時間半近く漬かっていられました。年頭にあったファミリー音楽会で、馴れぬ指揮をしたための両肘の筋肉痛も、少しおさまった気がします。からだの芯からほかほかとしてきました。

 18時13分の電車で高崎に戻り、また快速「アーバン」に乗り換えて帰途に就きました。高崎の乗り換えに30分ばかり暇があったので、駅前の広場でおこなわれている「光のページェント」を観てきました。年末年始だけのイベントで、来週には終わるそうです。
 駅ビルの食糧品売り場で、弁当などが3割引になっていたので、買い込んで電車に乗りました。またロングシートだったら食べづらいなあと思いつつプラットフォームで待っていたら、幸いセミクロスシートで、マダムが素早くボックスシートを確保しました。意外と混んでいて立ち客も居るほどで、ボックスには私たちだけでなく相客も居て、少々窮屈ではありましたが、私たちが弁当を食べ始めると、その相客も弁当を出して食べ始めたので、気詰まりな感じはせずに済みました。
 浦和に20時50分到着、京浜東北線電車に乗り換えて帰宅しました。
 行程としてはほぼ川口と小野上温泉を普通に往復し、新町と高崎で途中下車しただけというシンプルなものでしたが、愉しめました。マダムも大いに愉しんだようです。正規に切符を買っていたら往復で4420円となり、青春18きっぷも充分に活用できました。18きっぷは11500円で5区画(のべ5日。ひとりで5日使っても5人で1日使っても、今回のようにひとりで3日、ふたりで1日使っても良い)ですから、1日のうちに2300円分以上乗れば元が取れます。高崎まででも大丈夫でしたが、小野上温泉まで足を伸ばすことでさらに得の幅が大きくなりました。
 7日七草がゆ、そして七福神めぐりで、正月のわが家の行事は終了となります。

(2013.1.6.)


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