忘れ得ぬことどもII

小ネタ3題

人質解放について

 まずは、3年間というものテロリストに誘拐されて人質になっていたジャーナリストの安田純平氏が解放されたという話題。
 すでにあれこれと指摘されていて、あらためて私が言うまでもないのですが、この事件には不可解な点が数多くあり、本当は何が起こっていたのかがさっぱりわかりません。
 しばらく前に、動画が公表されました。安田氏が、前にISにとらわれていた日本人人質とそっくりなオレンジ色の衣服を着せられ、「私の名前はウマル韓国人です」と書かれた紙を持ち、日本語で、ひどい扱いを受けているので助けて欲しいという意味のことを話していたというものでした。
 この時点でも、疑問の声が頻々と上がりました。動画の最初に、状況のゆゆしさと不似合いな子供の笑い声のようなものが入っていたとか、どうも画面が合成くさいとか。そして何よりも、「韓国人ウマル」と自称した真意がなんなのか。
 疑問を抱く意見に対し、「あれはテロリストにそう言わされたのだ」と擁護する向きも見受けられましたが、テロリストが安田氏に韓国人であると自称させることで、いかなるメリットがあるのかという点を明確に説明できた人は居なかったような気がします。
 安田氏がこれまで5回もテロリストの人質となり、その都度生還していることを疑問視する声も上がりました。だいたい1回でもそんな経験をすれば、どんな人でもものすごく慎重になるはずで、いくらジャーナリストとしての使命感に燃えていたとしても、人質になるようなことの無いよう万全の対策を練るものでしょう。それが2回目どころか5回も捕まっているというのは、本当だとしたらオッチョコチョイにも度が過ぎるというものです。ISに捕まった日本人ふたりが斬殺されてしまっているのでもわかるとおり、テロリストの人質などはいつ殺されても不思議ではありません。
 それを5回も繰り返して、しかも毎度無事に帰ってきているというのは、何かヤラセのようなことがあるのではないかと疑われるのもやむを得ないでしょう。つまり自作自演ではないかというわけです。
 カメラマンの宮嶋茂樹氏が、あるweb番組で、
 「あの人に限ってそんなことはあり得ないですね。まじめな人ですよ。ちょっと不用心ではありますが」
 と断言していたので、私も自作自演と決めつけるのは控えていたのですが、それが解放された様子を見て、俄然疑わしくなってきました。
 とにかく、解放直後に語った人質生活の悲惨な様子と、その後の立ち居振る舞いに、あまりにギャップがあり過ぎるのです。
 これも前回触れましたが、安田氏は高さ1.5メートル、幅1メートルという、からだを伸ばすこともできない檻の中に8ヶ月のあいだ入れられていたと証言しました。身動きの音さえも立てることを許されなかったと言います。
 私はこの前左手の人差し指を骨折し、2週間固定されていましたが、副木を外して9日、まだ指にあまり力が入りません。だいぶ回復してきたとはいえ、もとのような握力が戻るにはもうしばらくかかるでしょう。
 8ヶ月も身動きできない状態で監禁されていたら、解放されてもまったく歩けない状態であったはずです。黒田官兵衛荒木村重にとらわれて土牢に監禁された結果、足の筋を傷めて、一生足をひきずることになってしまったのは有名な話ですが、適切なリハビリをかなり長期間おこなわない限り、一生ものの後遺症が残ることは避けられません。
 それが、スタスタと歩いて飛行機のタラップを昇っていたのですから、これはあやしいぞと思うほうが自然でしょう。少なくとも8ヶ月檻の中に閉じこめられていたという話は、嘘か、相当に盛っているのだろうと思われます。
 しかも、身動きの音も立てられないのに、彼はその間、日記をつけていたらしいのでした。どんな超能力を使えばそんなことが可能になるのやら。
 さらに、解放されてまず言うことといえば、生還の喜びであることが普通でしょう。あるいは尽力してくれた人々への感謝であるとか、自分の不用心さへの自責の念であるとか、そんな言葉が出てくるはずです。しかし安田氏が語ったのは、カメラや荷物を取り上げられたことへの不満だったのでした。しかも、
 「日本政府に助けられたとか、そんな風には思われたくない」
 というような意味のことを公言しています。ジャーナリストを称する者が反体制的、反政府的なスタンスをとるのは仕方のないことではありましょうが、あまりといえば傍若無人というものでしょう。
 解放された経緯もはっきりしません。なぜかカタール政府が3億円の身代金を支払ったという情報が飛び交いましたが、続報を読んでいません。本当にそんなことがあったのでしょうか。
 横から写した写真を見て、顔の前側はヒゲが伸び放題で頭もボサボサで、いかにも長期間監禁されていたように見えるが、後頭部はえらくすっきりと散髪してあるという指摘もありました。そこらの会社員と言っても通用しそうです。
 それに何しろ、肌つやが良すぎて、まるで憔悴したようには見えませんでした。さんざっぱら虐待されたの拷問されたのという話だったのが、傷跡ひとつ、あざひとつ見当たらないのです。むしろ長期休暇でリフレッシュした人であるかのようなはつらつたる様子でした。
 もと傭兵という、いわば戦場やテロのプロみたいな人が、
 「敵味方の捕虜を何人も見てきたが、みんな一週間もすると死人のようになる。20代の屈強な兵士が、白髪だらけの幽霊みたいになってしまうものだが……」
 と発言したりもしました。
 どうもおかしい、と思う人は少なくなかったようです。
 一方で、彼を英雄だの勇者だのと褒め称える向きも少なからずあり、いろいろ疑問の声が上がるのを、
 「安田さんは不当なバッシングを受けている」
 と批難し、まるで疑問を呈する者が人でなしであるような言いかたをしていました。その擁護者の顔ぶれが、ふだんから他人をネトウヨだのレイシストだのと決めつけてトンデモ発言を繰り返しているおなじみの面々だったので、さらに疑惑が深まった観がありました。
 が、しばらくして安田氏は記者会見を開き、だいぶ話を盛っていたことを告白したようです。実はけっこう良い生活をしており、20日間も食事を与えられなかったどころか、食事はきちんと供され、ときにはデザートにスイーツなどもついていたなどと判明したのでした。ウマルの動画も「ノリで作った」のだそうです。
 こうなると「人質であった」こと自体あやしくなってくるのですが、そのあたりはいまだはっきりしません。そのテロリストから、自分たちが人道的であることを世に伝えて欲しいと頼まれた、などと言っていますが、そもそもそのテロリストたちの名乗りも「よく憶えていない」というのですから、この人、なんの役にも立っていません。そういえば当初安田氏を誘拐したグループと目されていたテロ集団からは、
 「そんな話ははじめて聞いた」
 という声明が出ていましたっけ。
 事件の全貌はまだつまびらかにしませんが、どうも全体がインチキくさい騒ぎであったように思われます。彼を擁護していて、疑問を呈する人々をネトウヨ扱い、人でなし扱いしていたおなじみの面々も、記者会見後はぱったりとこの事件について触れなくなりました。さすがにきまりが悪かったのでしょう。
 なんにしても、不確実な情報だけで人を英雄扱いしたり人でなし扱いしたりするのが、賢い振る舞いでないことだけは確かです。

徴用工訴訟の判決について

 戦時中に「強制労働」を科せられた韓国人労働者に日本企業が補償せよという裁判でした。これもおかしな話で、確かに戦時中、それもかなり終戦近くなってから、日本人労働者がみんな出征して少なくなり、その分を「徴用」で補ったという事実はあります。「徴兵」で兵隊に行かなくとも良いから労働奉仕せよということなのですが、これは言ってみれば後方の国民の義務でした。女性も子供も同じように「徴用」されたのです。当時は朝鮮も「国内」でしたから、内地の女子供と同様「徴用」があったというだけのことで、占領地の人間に奴隷的な労働を強いたなどという話ではありません。
 そしてまた、仮に不本意な形で労働をさせられたのだとしても、そういう人への補償は、日本としてはとっくに済んでいます。
 つまり昭和40年の日韓基本条約で、「完全かつ最終的に」解決しています。この条約は、けっこうことこまかに、過去の両国のどういうことについてどのように取り扱うかということを規定しています。もちろん戦時中の徴用労働者の問題も明記されています。
 この条約で、日本側は徴用労働者に対する個人補償を申し出たのですが、韓国政府はそれを断り、個人への補償はすべてこちらで手配するから、総額を政府として受け取ると言ったわけです。この中にはもちろん、北朝鮮の分も含まれていました。
 ところが韓国政府は、その補償金を個人に還元せず、すべてを産業発展のためにつぎ込みました。いわばネコババした金で開発したのです。その結果が有名な「漢江(ハンガン)の奇跡」というヤツです。
 もちろんこのことは、韓国内ではひた隠しにされました。だから一般的な韓国人が、日本が「植民地支配」の賠償をまったくしていないのだと誤解しても、やむを得ないと言えばやむを得ないのでした。
 いずれにしろ、日本政府がこれ以上韓国に賠償や補償を払う必要が無いこと、いわんや日本企業が一銭も出す必要が無いことは、しっかりと条約で定められたわけです。
 しかし韓国が、国際条約を守る気がちっとも無い国であることは、数年前の慰安婦合意でもはっきりしました。政権が代わったりすれば、自分たちに不都合な条約などいつでも反故にして良いという考えかたなのです。これは中国の基本的姿勢とも相通ずるものが感じられます。
 いままでも何度か、戦時中の徴用労働に対して日本企業に補償しろという訴えは起こされていたようですが、さすがに韓国の裁判所も、訴えを却下し続けていました。いくらなんでもそれは無理な話だ、とわかっていたのです。
 しかし今回は、一審・二審では原告が敗訴したものの、ついに大法院(最高裁判所)で日本企業に賠償命令が下されました。最高裁での判例ですから、今後似たような訴えが起こったときには、まちがいなく日本側が負けます。
 国際条約ということを多少なりとも理解していれば、こんな判決が出るはずはないのですが、現在の大法院の裁判官は、文在寅大統領が自分の息のかかった連中を送り込んでおり、今回の裁判長も、それまでいちども判事の仕事をしたことがない人物だったそうです。言い換えれば素人です。国民の空気からして、日本企業に有利な判決などを出せば我が身が危ないとでも思ったのでしょう。
 日本が朝野を挙げて怒ったのも当然です。しかも韓国は、つい最近、旭日旗問題でもやらかしています。国際的な観艦式に、海上自衛隊が正式な隊旗である旭日旗を掲げて入港することを拒否するという、世が世なら宣戦布告ともとられかねまじき無礼をあえてしたのでした。
 「他の国にも、国旗のみを掲げて参加して貰うよう通達した」
 などと言っていましたが、そんな屈辱的な通達に従う国など世界のどこにもありません。どこの国も、ちゃんと軍旗を掲げていました。さらに韓国海軍は、日本に当てつけるように、李舜臣が使ったとされる鑑旗を掲げたのです。「国旗のみ」という通達を、自分たちが真っ先に破っていたのでした。これについても、
 「参加国と主催国は違う」
 と、世界のどこでも通用しそうにない言い訳をしていました。
 海自の護衛艦はもちろん参加を取りやめましたが、この騒動に続いての今回の判決で、いままでどちらかというと韓国に擁護的な意見だった人たちの中でも、
 ──やっぱり、あの国とはもうつきあいきれん。
 と見切りをつける向きが増えてきたということです。
 さらに、今回の裁判を起こした4人の原告は、そもそも徴用工ですらなかったということも判明しました。労働者募集に応じて「就職」した人たちであったのです。もちろん給料も貰っていました。労働がきつかったということはあるかもしれませんが、そんなのはあたりまえの話で、きつくない労働などこの世にありません。
 いま韓国は不景気で、若者が日本の企業に就職する動きが高まっていますが、こんな判決が出ては、彼らが数十年後、日本で強制的に労働させられたとして訴えることも充分可能になります。
 さすがに日本側が激怒しているだろうという想像だけはできるらしく、韓国のメディアや政治家は、さかんに「日本は冷静になるべきだ」とか「韓日両国で知恵を出し合って解決しよう」とか勝手なことをほざいています。冷静になるのはてめえらのほうだと言いたくなります。この件、日本側は何ひとつしなくて良いと思います。何を言ってきても「解決済みだ」のひとことで追い返せば良いでしょう。
 「そもそも韓国側は日韓基本条約を守る気があるのか」
 と逆にねじこむのも有効です。守る気があるのなら、補償問題はすべて韓国内の問題ということになりますし、守る気がない、あるいは「見直しては……」などと韓国側が言い出したらそれこそこっちのもので、戦前の日本人が半島内に残してきた莫大な資産を請求できる理窟になります。実際これは、オランダインドネシアに対してやったことと同じです。日韓基本条約では、これらの資産を日本側が放棄する代わりに、韓国側はこれ以上日本に賠償などを求めない、という取り決めになっていたのでした。
 韓国を「最悪のタイミングで最悪の決断を下す達人」と揶揄することがありますが、ここしばらくの動きを見るにつけ、この評はまったく的を射ているなあと思う次第です。

外国人労働者受け入れについて

 政府は決して「移民」という言葉は使わないのですが、どう考えても移民問題です。国際的な移民の定義に従えば、日本はすでに世界第4位の移民大国だというデータがあるくらいです。
 健康保険とか生活保護とか、外国人労働者に関していろいろ問題は指摘されていますが、私が言いたいのは一点だけです。受け入れるのなら、まず「追い出す」仕組みをしっかり作っておかないと収拾がつかなくなるということです。
 しばらく前のカルデロン事件の様子を見ても、日本社会はまだ「必要の無くなった外国人労働者を国外に追い出す仕組み」がまったくできていないと感じざるを得ません。シンガポールのように「外国人は、職を失ったら即国外退去」というような非情でドライな規定を、いまの日本で制定できるとはとても思えないのです。確実に「それはあまりにかわいそうだ」と言い出す人が出てきます。そのうち「人権弁護士」と称する連中が焚きつけて訴えを起こさせたりします。好むと好まざるとにかかわらず、日本社会というのはそういうウェットなところがあり、従ってそう簡単に受け入れることはできないと私は思います。「仕事を一緒にするのは構わないが、住むところだけは別にしたほうが良い」という曾野綾子氏のしごくもっともな意見が、差別主義的だとして大騒ぎになるような社会なのです。
 好況で人手不足が深刻だというのですが、実態は従業員の給料を上げたくない経済界が、安価な労働力を得たいからというのが今回の外国人労働者受け入れの動機であって、そんな情けない動機で受け入れるのでは、相手かたにも失礼というものでしょう。外国人労働者は安くこき使われていると感じ、自国民は外国人に仕事を奪われていると感じるようになれば、ヨーロッパで起こっている移民問題とまったく同じ構図になってしまいます。そうなれば、日本の美点である治安の良さも、音を立てて崩壊することでしょう。私は日本が、テロ事件が相次ぐような国にはなって貰いたくありません。
 断っておきますが、外国人労働者を入れるな、とは私は言っていません。入れるための準備や対策を充分にしてくれ、と言っているだけです。その中でもとりわけ「追い出す」仕組みが重要だろう、と考えているのです。

(2018.11.7.)

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