忘れ得ぬことどもII

旭日旗騒動

I

 はた迷惑な隣国が日本のことにあれこれ難癖をつけてくるのはいまに始まったことではありませんが、最近はもう自家中毒を惹き起こしてしまって、何をやっているのか自分たちでもわかっていないのではないかと思われることが多くなっています。
 日本の旧海軍から現在の海上自衛隊に引き継がれた「旭日旗」への攻撃が異常になってきました。
 旭日旗は中央の日の丸から放射状に赤いラインが拡がっているデザインで、軍旗であっただけではなく、漁師さんたちの大漁旗などにも多用されています。また、一貫して「軍靴の音」をおそれ続けている朝日新聞の社旗も一種の旭日旗です。あの朝日新聞が自社のシンボルとして平気で使い続けているのですから、いわゆる軍国主義なるものとは全く無関係であることは言うまでもありません。昔から日章旗に次ぐものとして、いろいろにアレンジされて普通に使われてきた、めでたいデザインであると言えるでしょう。
 ところが、韓国ではこれを「戦犯旗」と呼び、ナチスハーケンクロイツと同等のものとして猛攻撃を加えています。
 もちろんそんなことは言いがかりに過ぎませんが、その攻撃が、日本に向けられるばかりでなく、世界中に向けられているのが、いままでと違った展開であるようです。ほとんど、誰彼かまわず吠えかかる狂犬みたいな状態になりつつあるのです。

 旭日旗のデザインというのは、つまり放射線とか集中線とか呼ばれるものに過ぎず、ごく一般的なものです。マンガなどにもよく使われます。子供に太陽を描かせたら、自然に、丸の周りに拡がる線を書き加えるでしょう。だから別に日本の専売特許でもなんでもなく、実際にマケドニアの国旗は、配色こそ違いますが(旭日旗は白地に赤、マケドニア国旗は赤地に黄色)、ほぼ旭日旗と同じデザインになっています。
 だから当然、世界中いろいろなところに意匠として使われています。
 隣国の連中は、それを、片っ端から糾弾しはじめたのでした。
 私が仄聞しただけでも、次のような騒動が起きています。

 ●京畿道にある花井(ファジョン)という駅の駅前ロータリーの噴水のデザインが、上から見ると旭日旗そっくりだというので、「無神経だ」と大騒ぎ──2012年8月20日

 ●英国の歌手コナー・メイナード氏のインタビュー動画の背景に旭日旗デザインがかかっていたというので大騒ぎ──9月6日

 ●電子機器メーカー「キャニオン」が東日本復興グッズとして売り出していた「ライジング・サン・エディション」シリーズが旭日旗デザインだというので、ネット民が執拗に抗議し、販売中止宣言に追い込む──9月28日(ただし、調べてみたらキャニオンのサイトではまだ普通に「ライジング・サン・エディション」のアピールをしていました。韓国からの抗議がうるさいので、ほんのわずかな期間、販売を自粛しただけだったようです)

 ●英国・マンチェスターユナイテッドの試合で、現地ファンが旭日旗に似た旗を振っていたのを見て、韓国人アナウンサーが公共の電波で「イカれた野郎がひとり居ましたね」などと口走る──9月30日

 ●きゃりーぱみゅぱみゅが正月に撮影した写真で旭日旗を持っていたり、旭日旗デザインのトリック写真があったりしたので「絶望した!」と大騒ぎ──2013年1月3日

 ●ニューヨークのあちこちに「戦犯旗」イメージがあふれているというので、韓国人画家が「許し難い。私たち韓国人社会が戦犯旗イメージの浸透を防がなければ」と檄を飛ばす──1月31日(彼の言う戦犯旗イメージというのは、要するに集中線デザインというだけのことです)

 ●ニューヨークで「戦犯旗撲滅」を願う「平和マラソン」開催──2月18日(参加者は在米韓国人だけだったようですが……)

 ●英国の寿司屋(英国人経営)のロゴに旭日旗が使われていたので、韓国からの女子留学生が抗議し、謝罪させる──3月31日

 ●英国のロックパンド「ミューズ」のプロモーションビデオに旭日旗が使われていたので、韓国のネット民が猛抗議し、動画削除に追い込む──4月23日

 ●イタリア「ベニヤミン」というメーカーが旭日旗デザインの携帯電話ケースを発売。韓国のネット民は早速猛抗議したが、この時はベニヤミン側にあっさりいなされて空振り。──5月9日

 ●ニュージーランドのお菓子メーカー「ウィッタカーズ」のチョコレートの広告デザインが旭日旗に似ているというのでこれまた大騒ぎ──6月8日(これもただの集中線です)

 そして今日6月12日

 ●トニー賞の授賞式の背景に旭日旗っぽいデザインが!

 というのでまた大騒ぎになっているという記事を読み、噴き出してしまいました。これももちろん、日本とは関係ない、ただの集中線であるに過ぎません。
 以上、たいていはネット民が騒ぎ出して、当該の相手に大量に抗議メールを送りつけるというのが典型的なパターンなのですが、去年の8月末には、なんと韓国の国会で「旭日旗禁止決議案」なるものが発議されています。これは日本にも「旭日旗禁止法」を制定するよう求めてゆくという、正気の大人とは思われないような決議案でした。国会議員がこんなことを言い出しているのですから、もう一部の跳ねっ返りが騒いでいるなどとは言い抜けられないでしょう。

 キャニオンやベニヤミン、寿司屋のケースは、日本を意識した旭日旗デザインであったと思いますが、ウィッタカーズやトニー賞になると、もう言いがかり以外の何物でもありません。彼らはあらゆる「集中線デザイン」にイチャモンをつけ続けるつもりでしょうか。
 そうなると、仏像やキリスト像の後光だって問題となるでしょうし、ほとんどすべてのマンガがひっかかるはずです。彼らのいわゆるマンファだって同様です。
 こうなっては、病気としか言いようがありません。冒頭に書いたように、日本が憎くて憎くて、自家中毒を起こしてしまっているようなものです。

 「アジアで2000万人を殺戮した戦犯の旗だから、使うのはけしからん」というのが彼らの主張なのですが、つっこみどころはたくさんあります。
 2000万人という数にどんな根拠があるのかはさておき、戦時中は「今の韓国人」は日本人として扱われていたのであり、彼ら自身もこの旗を押し立てて中国軍などと戦っていたはずです。他の国にしてみれば、「おまえが言うな」というところでしょう。
 しかも、旭日旗は戦後65年以上、どこの国からもなんの抗議も受けていません。韓国発のニュースなどでは、「1945年の終戦と共に使用を禁じられた」などと書いてあることがありますが、そんな事実はありません。現に海上自衛隊の自衛艦旗としてずっと使われ続けています。韓国以外のアジア各国はもちろん、直接刃を交わした中国やUSAですら、それについて何も言っていません。マレー沖海戦で日本海軍に惨敗を喫し、日本のせいでアジアにおける植民地をことごとく失った英国など、遺恨を持っていても不思議ではないのですが、むしろ積極的に旭日旗デザインを採り入れていること、上に見た通りです。韓国だけが異常に怒り狂い、他の国にまで口を出して「日本戦犯旗のデザインを使うなどという『誤り』を正してやらなくては」などと息巻いているわけです。
 が、無理がありすぎます。当の韓国自身、約65年間、文句をつけたことなどただの一度も無かったのです。旭日旗を戦犯旗などという無礼きわまりない名称で呼び、いちいちイチャモンをつけはじめたのは、ほんのここ数年……というかはっきり言えば2012年の夏からです。

 ロンドンオリンピックサッカーの試合で、パク・ジョンウ選手が試合終了後に「トクトヌン ウリタン(独島=竹島=はわが地)と大書されたプラカードを持って走り回り、大会中の政治的アピールを禁じたオリンピック憲章に違反しているということで騒ぎになったのは記憶に新しいところです。韓国人は日本人がからむあらゆる場でこれをアピールしているので、もはや政治的アピールであるという意識さえ無くなっていたらしく、なぜ他の国から批判されるのか理解できない様子でした。「愛国心に免じて許して欲しい」などとトンチンカンなことを言う者もいました。
 ともあれ、これはどうもまずいことになったと気がついた韓国側が、突然、日本の応援に持ち込まれた旭日旗や、旭日旗をイメージしたと思われる日本の体操選手のユニフォームに対して難癖をつけはじめたのでした。「日本だって『戦犯旗』を持ち込んで政治的アピールをしているじゃないか!」という趣旨でした。
 上記の独島パフォーマンスは対日本戦でのことではなく、この件に関しては日本はまったく無関係でした。寝耳に水というか、「(゚Д゚)ハァ?」としか言いようのないとばっちりだったのです。
 韓国側はIOCに抗議し、さらに日本が体操競技で獲ったメダルをすべて剥奪するよう求めました。もちろんそんな要請が通るはずはなく、あっさり却下されましたが。
 その前にも、サッカーのアジア杯決勝戦でキ・ソンヨンが猿の真似のパフォーマンスをして批難されるや、
 「応援席に旭日旗が見えたのでカッとなってやってしまった」
 と、言い訳にならない言い訳をしたことがありました(なお韓国人は日本人に対する蔑称のひとつとして「倭猿」とよく言います。日本人が過去アメリカ人などからイエロー・モンキーなどと蔑称されたのは事実ですが、この呼称には黄色人種すべてが含まれていると見て差し支えありません。しかし韓国人はなぜか、自分たちだけはイエロー・モンキーではないと思い込んでいるようです、そのため平気で「倭猿」などと呼ぶのですが、日本人側は「それならおまえらだって『韓猿』じゃないか」と思って、別に腹も立てないことが多いようです)。だから旭日旗に対する反感は前々からあったのかもしれませんが、それが狂気じみた形をとりはじめたのは、ここ10ヶ月ほどのことに過ぎません。
 要するに、自分らがまずい立場になったことを覆い隠すために、大声を上げて日本を批難することにしたというだけのことなのでした。朝鮮半島では昔からよくおこなわれていた声闘(ソント)というヤツですね。理屈などどうでもよく、とにかく大声でわめき倒して相手を黙らせれば、それで議論に勝ったことになるという、世界中で朝鮮半島でしか通用しない決着のつけかたです。日韓両国の学者で歴史を検討することになって、日本側の学者が
 「史料はこうなっていますが……」
 と説明にかかると、韓国側の学者が 
 「あなたには韓国に対する愛情は無いのか?」
 とわめき出して、結局なんの得るところも無かったというのは有名な話ですね。こういう状態になると、日本人はたいていばからしくなって議論をやめてしまうのですが、そうすると韓国的判断では「日本人を論破した!」ということになるようです。

 1990年代くらいだったら、日本人は納得は行かないまでも、

 ──まあ、あそこまで隣国の人たちが嫌っているのなら、使うのはやめようか。近隣諸国がイヤだと言っているものを無理に使うことはあるまい。

 ということになっていたかもしれません。そして朝日新聞あたりが「戦争で被害を受けた人々の感情に配慮すべきだ」というような論陣を張り、世の中の人もなんとなく旭日旗が「戦犯旗」であるような気分になって行ったのではないでしょうか。教科書の「近隣諸国条項」も、そんな空気の中から生まれてしまいました。靖国神社が問題になったのもその流れだし、河野談話なんかが出たのもそのせいだったと思います。
 しかし、その時代に較べれば、日本人も少しは目覚めていました。若い世代にはネットを中心に、韓国の本当の姿を見抜いている人が増えてきていましたし、ロンドンオリンピックの騒ぎとほぼ時を同じくして、李明博大統領(当時)の竹島上陸や、天皇陛下に対するきわめて非礼な発言などが伝えられたため、ネットとは縁の薄かった年配の人々の態度も硬化したのでした。
 当時の民主党政権は、中国や韓国に対する遠慮が異常なほどに強い政権ではありましたが、その民主党政権でさえ、旭日旗を使わないようにしたらどうかなどとは一度も言い出しませんでしたし、朝日新聞もだんまりを決め込みました。考えてみれば旭日旗を批判しはじめれば、自分のところの社旗もダメになるわけで、朝日といえどもさすがにそのことに気がついたのでしょう。
 日本が完全に知らんぷりをしているので、韓国側は意外に思ったかもしれません。あてがはずれたというか、のれんに腕押しというか、こんなはずではなかったという気分になっているのではないでしょうか。それだから余計声高になり、どう考えても旭日旗とは無関係なただの集中線にまで文句をつけるという、世界中から正気を疑われるような行動に出始めたのだと思われます。もうひっこみがつかなくなっているのです。
 ネットでの日本人側の反応の主流は、

 ──もっと理不尽にわめき立てて世界中から嫌われてしまえ。

 と、ニヤニヤしながら相手の空回りを眺めているという感じで、まあ余裕綽々たるものです。
 そして現実政治の上でも、安倍晋三首相は、就任以来、ほとんど韓国ごときを相手にしていないかのごとくふるまっています。多くの国を訪ねたり招いたりしていますが、中国と韓国にはまだなんのコンタクトもとっていません(水面下では知りませんが)。北朝鮮にすら特使を派遣したのに、この2国のことはガン無視という趣きです。安倍首相は、いちど失脚して死線をさまよってから復活、再登板しただけに、こういうところ、非常にしたたかになっているようです。中国とのことはまた別に考えるとして、韓国に対しては、じらしにじらして軽くあしらっている観があり、あちらが奔命に疲れ果てるのも遠いことではなさそうです。
 さて、この旭日旗騒動、日本からは特になんにもしなくて良いと思いますが、韓国は振り上げた拳をどうやって下ろすつもりでしょうか。朴槿恵大統領のお手並み拝見ですね。

(2013.6.12.)

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