忘れ得ぬことどもII

いろいろ中止

 新型コロナウイルスの騒ぎで、今月は数多くのイベントが中止または延期の憂き目を見ているようです。人がたくさん集まるような催しの自粛が要請されて、演奏会などもずいぶん無くなってしまいました。観客も熱狂して大声でがなりまくるロックコンサートのたぐいはともかく、クラシックコンサートであればお客は黙っているし、ホールもおおむね広いわけなので、そんなに神経質に自粛しなくとも良いような気がします。実際、映画などは比較的安全な娯楽と見なされているようです。
 この時期に来日していたアンドラーシュ・シフのコンサートなどは、おそらく当人の希望と思いますがけっこう開催されていると聞きますけれども、それでもホール自体の閉鎖のために中止になった回などもずいぶんとあります。
 今月だけではなく、来月以降も次々と中止になっているようです。確かに今月中に騒ぎが終熄するなどという保証はまるで無いわけです。むしろ感染が拡がる一方ではないかという懸念がぬぐえません。
 コンサートに関して言えば、例えば4月、5月の開催予定であったとしても、3月中はリハーサルのために集まるのもちょっと抵抗があるような状態でしたから、練習とか準備が間に合わないという心配もあるでしょう。ものによってはずいぶんと先のイベントが中止になったりもしています。例えばマダムの学校の卒業生で作っている団体の演奏会など、7月に予定されていたのに中止になったそうです。
 オーケストラなどでも、現状では合わせがしづらいのではないかと思います。オケのメンバーの相互距離は、感染防止距離とされる2メートルよりもだいぶ近いはずです。弦楽器ならまだしも、管楽器あたりではやはりお互いに不安があるでしょう。
 私に関しては、今月は特に関係している演奏会などは無かったのですけれども、来月からはいろいろあります。
 まず直近の4月5日(日)にはピアノ教室の発表会を予定しています。5月5日(火)にはChorus STの演奏会があり、6月21日(日)には板橋オペラの公演があり、7月5日(日)には平塚『星空のレジェンド』第6回公演、同11日(土)にはコーロ・ステラの演奏会、同25日(土)26日(日)『星空のレジェンド』ミュージカル版の初演が予定されています。まあ板橋オペラと『星空のレジェンド』関連は、当日に私自身が演奏に加わるということではないのですが、ある程度の責任は負っています。目白押し、というほどではないにせよ、そこそこ詰まっていると言えるでしょう。
 いまのところ、これらの演奏会に関しては、中止とか延期とかいう話は出ていません。
 4月5日の発表会は、入場無料ということもあり、たとえ無観客でも敢行しようという話になっています。まあ実際には生徒の家族などは来るでしょうから、まるっきり無観客ということは無いでしょうが、身内だけの集まりになるということは考えられます。まあ発表会という性格上、それでも良いと言えば良いでしょう。
 問題はChorus STの演奏会でした。ゴールデンウィーク中の催し物は、すでに中止を表明しているものが多く、時期的には非常に微妙です。今回は団員だけでなく、30周年記念ということで40人近くの賛助出演者が居るので、余計に気を使うのでした。話し合った結果、一応中止はしないという方向で動くことになりました。ただ、今月中の練習が何回も中止になっており、はたして演奏の完成度をきちんと上げられるのかが不安ではあります。昨日(3月20日)、春分の日だったので賛助出演者と一緒の練習を、久しぶりに開催しました。出席者は6割程度で、ほぼ全員マスクを着用した上での練習でしたが、みんな今月はあんまり歌っていないせいか、たいへん熱の入った練習になっていたような気がします。残り練習回数もわずかになっているので、これからだいぶ詰めなければならないでしょう。
 板橋区演奏家協会の催しは、今月3回入っていましたが、それらはすべてキャンセルされました。管轄の公共財団からの要請なのでやむを得ません。2回は簡単なサロンコンサートのたぐいでしたが、1回は主要事業であるライブリーコンサートで、出演者がすでに売ったチケットをどう払い戻すかなど、いろいろ頭の痛い後始末が残っています。6月のオペラ公演はいまのところ中止や延期の話を聞きませんが、区民有志によるオペラ合唱講座がこのあいだからはじまっており、それなどは多少滞っているのではないでしょうか。これも本番までのスケジュールの組み直しが大変かもしれません。
 『星空のレジェンド』関連のふたつも、アマチュアが主体となるイベントだけに、この時期の練習中止がいろいろ響きそうです。まあミュージカル版のほうは、どういう稽古スケジュールになっているのか、私はよく把握していないのですが。
 コーロ・ステラも演奏会を延期したり中止したりする気は無いようです。ただこの合唱団も、今月中は何度か練習を中止しており、本番までの練習計画の練り直しを余儀なくされています。
 全体として、来月以降にいろいろしわ寄せが来そうで、気が重いところです。

 そういえば東京オリンピックも延期説が流れるようになりました。
 私としては、もともと東京の夏にオリンピックなどをやるのは無謀だという考えでしたので、延期大いに結構と思っています。56年前、私の生まれた昭和39年のオリンピック同様、10月頃に開催すれば良いのにとずっと言っていました。現行のオリンピックが毎回7〜8月のいちばん暑い盛りに開催されるようになってしまったのは、もっぱらUSAのテレビ放映の都合に過ぎません。10月頃だとワールドシリーズ他スポーツイベントが目白押しで、オリンピックの放映を割り込ませるのが大変だというので、わりと暇な8月頃の開催を要請していたのです。IOCのほうも大切なスポンサーの仰せとあっては逆らえなかったのでしょう。
 しかし、東京の真夏に屋外のスポーツイベントなどは、本当に無謀です。連日35度を超え、しかも湿度もおそろしく高い熱帯並みの気候の中で走ったり跳んだりするなど、正気を疑うような行為です。アスリートたちはそれでも鍛えていますのでなんとかこなすかもしれませんが、観客のほうには死人が出そうです。ただでさえスポーツの応援という、頭に血が昇りそうな状況なのですから。アスリートのほうも、こんな気候の中で新記録を出すのは困難ではないでしょうか。
 ちょうどUSAのトランプ大統領がオリンピックの延期を口にしたのですから、渡りに船で、10月開催にしてしまえば良いのではないかと私は考えています。
 実は延期どころか、私は中止にしてもいっこうに構わないと思っています。大体今回のオリンピックは、最初からケチがつきまくりでした。新競技場の設計をコンペで募ったら、採用されたものがあまりに建設費が高くつくとわかって取りやめにしたとか、エンブレムの最初の採用者が盗作疑惑で取り下げになったとか。会期中のボランティアのユニフォームも、李氏朝鮮の門番かと言いたくなるようなヘンテコなデザインだったのが、あまりの評判の悪さに取り下げられたという話もありました。それからもちろん、築地市場豊洲移転が小池百合子都知事の横やりで遅れに遅れ、オリンピックのときに輸送路として使うはずの道路が敷けなくなったというドツボもありました。
 とにかく、これがかつて一度開催したことがある都市だろうかと疑わしくなるほどのていたらくで次から次へとケチがつきまくっています。しかも、確かコンパクトで低予算な大会を標榜したと記憶しているのですが、事業費はとてつもなくふくれあがっています。むしろ近年稀に見るような高額予算となっているのではないでしょうか。どうも、今回東京がオリンピックを開催することに、オリンポスの神々が異議を申し立てているのではあるまいかと思われるような不始末続きです。
 もう何兆円というカネをつぎ込んでいるのだから今さら引き返せない、という向きも多いでしょう。しかしそういう考えかたは、泥沼化した戦況から抜け出ることができなくなった第二次世界大戦での日本軍を連想してしまうのです。戦費をいくらつぎ込んだ、何万人の兵が犠牲になった、いまさら引き返しては国民や英霊の手前申し訳が立たない、という理由づけで、損切りをためらったあげくの大敗戦の二の舞は、正直ごめんこうむりたいものです。
 オリンピックは本家本元たるギリシャに返して、まわり持ちはやめ、毎回ギリシャで開催するということを検討すべき時期にさしかかっているのではないでしょうか。

 再び私自身の話に戻りますが、今月は結果的に、合唱指導がすべてキャンセルとなってしまいました。
 現在私は、コーロ・ステラクール・アルエット小樽商大グリークラブOB会、それに川口第九を歌う会と、4つの合唱団で指導または練習ピアニストを務めています。このうちコーロ・ステラと川口第九を歌う会はだいたい月イチで、アルエットと小樽商大は月3回程度です。
 小樽商大が最初に、3月中の練習は取り止めと言い出しました。練習場所が池袋なので、集まるだけでも否応なく人混みの中を歩くことになるので、遠慮したいというメンバーが多かったと思われます。
 次に第九を歌う会が、やはり3月中の練習を取り止めると言ってきました。もともとの予定でも1回だけだったとはいえ、ここがいちばんコストパフォーマンスの高い仕事先なので、やはりがっかりです。
 アルエットは特に「3月中休み」という取り決めにはなっていなかったのですが、毎週団長から連絡が来て、今週は皆さん集まりそうもないのでお休みにします、と言われました。練習日は金曜日なのですが、結局3回とも(昨日は祭日なのでもともと休みでした)つぶれてしまいました。
 ステラは2回休みにしたものの、今週から練習を再開したらしいのですが、私の担当していないステージの練習具合が心許ないということで、来週予定されていた私の指導回を、もうひとりの指導者に譲らざるを得ませんでした。
 結果的に、全然指導の仕事が無くなってしまったことになります。
 どこかで、世の音楽家たちは今月、平均してひとり10万円くらい稼ぎ損なったらしい、という話を聞いたのですが、私もまさにそれに近いことになっていたわけです。雀の涙ほどの給付金が出るらしいという話もありますが、どうなることやら。
 こんなときでも、マンションの管理費だの光熱費だの、いろんな引き落としなどは無慈悲にもなんの配慮もなく実行されてゆくわけで、しかも来月は国民年金の納付もあります。固定資産税の納付も近いでしょう。給付金などより、そういうものの延滞もしくは減免を認めて貰いたいものだと思わざるを得ません。
 いい加減にして欲しいものです、まったく。

(2020.3.21.)

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