忘れ得ぬことどもII

新型コロナウイルス騒動

 中国・武漢からはじまった新型コロナウイルス肺炎は、とどまるところを知らずに感染を拡げているようです。
 初動が悪かったのは言うまでもありません。新型の肺炎が流行すると、最初に警告を出した武漢の医師たちは、人心を惑わす妖言をなすものとして拘束され、なんら対策がとられることなく放置されました。間もなく中国では春節(旧正月)を迎え、すさまじいほどの人数が移動しました。そのあとになってようやく武漢市街が閉鎖されたりしましたが、もう感染を防ぐのが手遅れであることは誰が見ても明らかでした。
 WHO(世界保健機構)がまたお粗末な対応を繰り返しました。全面的に中国の言い分を受け容れ、当初は世界的な感染は起こらないと断言していたのです。事務局長のエチオピア人テドロス氏が、完全にチャイナマネーに屈した状態であるらしいという噂が流れていますが、真偽のほどは明らかではありません。しかしその言動はどう見ても中国の言い分をそのまま垂れ流しているに過ぎず、中国の対応を賞賛さえしています。もはやどの国も、WHOの言うことなど信用しなくなっているようです。
 ヨーロッパでは、アジア人がもれなく排斥されつつありました。連中には中国人や韓国人や日本人をぱっと見ただけでは区別がつかないのでしょうから、やむを得ざるところもあるとはいえ、さんざんポリティカル・コレクトネスをやかましくぶち上げている欧米人も、ひとたび事が起こればこんなものだということをさらけ出しました。彼らの「人種差別反対」などはなはだ浅いものであったのです。イタリアの音楽学校では、日本人を含アジア人の受講が拒否されました。フランスなどでもいろいろとイヤガラセや子供のいじめなどが発生しています。
 しかし、いまやイタリアは、中国・韓国に次ぐ第3位の感染者数を持つ国になってしまいました。EUは行き来が自由なので、遠からずヨーロッパ全域に拡がることでしょう。
 もっとも、感染者数の正確なところは誰もわかりません。中国人が圧倒的に多いだろうとは思いますが、中国政府が発表している数値はまったく信用できません。事故の死傷者数すら、あまり多いと管轄の責任を問われるためにごまかすのが常態になっている国です。
 他の国は数値をごまかすということはあまりしないかもしれませんが、その数値の出しかたが国によってばらばらなので、これもあてにならないようです。感染検査そのものが現状ではけっこう手間がかかる上、その検査の信頼性も5割とか6割とか聞きます。陰性のものを陽性と間違うことはないかもしれませんが、陽性なのを見逃してしまうことは充分にありうる話です。しかも、陰性だった人が翌日感染し陽転するということもあるわけで、はたして意味があるのかという点も疑問に思われています。
 韓国で感染者数が多くなったのは、中国と陸続きということもありましょうが、それよりも、感染者には給付金を出すなどという愚策を実行したからであるようです。その結果、やたらと人々が検査に押しかけるようになり、それで感染者もたくさん発見されたわけですが、病院ではコロナウイルスの検査に忙殺されて、それ以外の重篤な病気が顧みられなくなり、肺炎でない死者が増えるという本末転倒なことになりつつあります。
 さらに、検査におしかけた人々のあいだでの感染も少なくなさそうです。またこのウイルス、潜伏期間が2週間くらいだとのことで、陽性になった人をその期間隔離して様子を見なければなりません。そのための病床もたいへんな数になります。

 陽性になった人の発病率、発病した場合の致死率など、いろんな変数がまだわからないところが多く、はたしてわれわれはどのくらい怖れなければならないのかというあたりもはっきりしません。ただ、騒ぎが起こりはじめてから数週間が経ってみて、案外と、そんなに怖がることもないのではないかという気がしてきています。
 武漢ではだいぶ死者も出ている様子ですが、そもそも適切な治療がおこなわれていないのではないかという疑いがあります。突貫工事で作ったという施設は、ほとんど収容所のようなありさまで、何百という簡易ベッドがただ並んでいるだけの部屋でした。昔、上海で停まったホテルのドミトリーを連想しましたが、治療なんかする気はないだろ、と言いたくなるようなシロモノです。
 日本では3、4人亡くなっているようです。ただ、いずれも持病を患っていたお年寄りで、はたしてコロナウイルスが単独の死因であるかどうかは微妙です。一種の合併症ではなかったかと思います。
 日本は検査を受けるためにある程度の条件を課しており、そのおかげで韓国のようにみんなが検査を受けに押しかけるという事態には陥っていません。パニックを防ぐにはそのほうが良かったと思いますが、もしかして感染しているのではないかと不安に思う人は多いでしょう。
 実際、息子が肺炎にかかったのにコロナの検査をして貰えないとSNSなどで大騒ぎしていたお母さんが、テレビのワイドショーに取り上げられたりもしています。この息子、最初にかかった病院でマイコプラズマ肺炎の診断を受けたのですが、母親は納得せず、コロナウイルスの検査を要求したそうです。しかし検査の要件を満たしていなかったので病院側は拒否。母親はその病院を見限って他の病院に診せに行きますが、そこでも新型コロナウイルス肺炎とは診断されず、またもや他の病院へ……というようなことをしているうちに症状は悪化してしまいました。
 この息子さん、幸いにも数日後に治ってすっかり元気になったそうで、結局コロナではなかったようなのですが、マイコプラズマ肺炎という診断を信用せずにあちこち廻ったのは明らかに不適当です。医療にいちばん大事な経過観察ということができなかったからです。経過観察の結果マイコプラズマにしてはおかしいとなれば、最初の病院だってコロナの検査をしてくれたはずですが、素人判断で新型肺炎と思い込むとそれを待っていられないようです。下手をすれば息子は適切な治療が受けられずに重篤になったかもしれません。
 ワイドショーでは、希望者が検査を受けられずに不安を募らせる好例のように扱っており、政府の方針を叩く材料にしていたようです。しかし、とにかく検査できる数が限られている以上、条件を課すのは仕方のないことでしょう。このたび、より簡易な検査方法が導入されることになったとのことですが、新型肺炎以外の病気が顧みられなくなるという、韓国の二の舞のような愚行は避けたいところです。
 今回の新型コロナウイルスは、感染力はかなり強いけれども、発病率はそう高くなく、致死率に至ってはインフルエンザなどに較べてもかなり低いというのが、現在までの様子を概観した上での印象です。ただし変異が早くてどんな危険なものに変わってしまうかわからないというのと、二度三度と感染することがありそのように重複した場合が危ないという点が不安要素ではあります。
 いずれにしろいまのところワクチンがまだできておらず、対症療法しかないわけで、検査の結果陽性だったからといって何ができるわけでもなさそうです。4、5日安静にしているという程度の対処方法、言い換えれば普通の風邪と同じくらいの対処方法しか無いわけです。

 ウイルス性のものですから、マスクなどはあまり役に立たないとも言えますが、飛沫感染やエアロゾル感染が主らしいので、ウイルスそのものを遮断はできなくとも、ある程度の予防にはなるでしょう。欧米人はなぜかマスクをつけることをいやがるというか、マスクなどつけているとよほどの重篤患者みたいに思われるそうですが、感染が思ったより早く拡がっているのはマスクをしないせいかもしれません。WHOもマスクなど不要だというような声明を出しましたが、根拠のあることなのやら。
 ともあれマスクが入手困難になりました。私のところではマダムが年中つけているので箱買いしてありましたが、残数は少々心許ない状態です。どこの店に行っても売り切れで、次の入荷は未定といった貼り紙がしてあります。この状態で、恒例の花粉症の季節に入ってしまったので、いささか先行き不安を覚えざるを得ません。マスクはウイルスは防げませんが花粉は防げるので、花粉症でない皆さんはそろそろ買い占めをやめて貰いたいものだと思います。
 加えてトイレットペーパーやらティッシュペーパーまで品薄になってしまったに至っては、わけがわかりません。これについてはどうも「マスク増産のために紙が必要で、これから紙が不足するらしい」という流言飛語があった様子です。さらに女性の生理用品などまで売り切れが続出しているらしく、先ほど薬局へ行って目を疑いました。パニックではないにせよ、なんだか人々が変な浮かされかたになっているように思えます。
 使い捨てマスクによく使われている不織布は、パルプが原料ではなく、紙とは関係ありません。各製紙会社も、トイレットペーパーやティッシュペーパーの生産量にはまったく影響がないと明言しており、不足するらしいというのははっきりとデマなのですが、デマでもなんでも店頭から無くなってしまうのは困ります。早く落ち着いて欲しいものです。

 3月いっぱい、学校が閉鎖されることになりました。これは地域ごとの判断になりそうですが、政府からの要請なので、少なくとも国公立の学校は大半が休校になるでしょう。後半は春休みなので、まあ半月から20日くらいの休校ということになります。
 ただ学校が休みになって、子供たちが自宅に居れば良いのですが、親が共稼ぎだったりすると、学童保育などに集まることになりそうです。そうすると学校以上に人口密度が高くなるのが必至で、かえって感染が広まりそうな気がしないでもありません。
 マダムが働いている公文式の学習塾も休みになりました。公文式がこういう理由で全国的に休業するのははじめてだそうで、ニュースになっていたそうです。
 コンサートなども続々中止や延期になっています。板橋区演奏家協会がらみでも、3月3日10日に予定されていたロビーコンサートが中止となりました。このふたつは無料の出張コンサートなのでまだ良いのですが、14日に予定されていたライブリーコンサートも中止を要請され、こちらはすでにチケットがけっこう売れていたので困ったことになりました。いちばん良いのは、時期を改めて同じ内容のコンサートを開催することにして、今回買ったチケットでそのまま入場できることにするという方法なのですが、その延期のメドがすぐに立てられるものでもなく、どうしたものかと思案しています。私は震災のときに、豊洲で開催されるファミリーコンサートを自分の判断で延期したことがありますが、これは出演者がチケットを売らなくとも良い形態のコンサートであったから話が簡単だったのでした。出演者から売ったチケット分を返金するというのはなかなか大変です。
 合唱の練習なども感染が危惧される場です。Chorus STの練習も、とりあえず今週と来週は休みになりました。明日(3月1日)にも賛助出演者向けの練習が設定されていたのですが、それも当然中止です。来週末くらいにはなんらかの進展があって貰いたいものですが、こればかりはなんとも言えません。
 Chorus STは本番が近いということで心配ではありますが、まだましです。小樽商業大学グリークラブOB会の指導をまたはじめているのですが、これが3月いっぱい練習中止となり、こちらは私の収入にダイレクトに響いてくるので痛いところです。また川口第九を歌う会も3月中の練習を中止しました。この団はローテーションで行っていて、3月には一度しか入っていなかったものの、それでも減収は減収です。
 私の仕事は基本的に日銭稼ぎで、いわば水商売なので、こういうことになると本当にかないません。それでなくともかつかつでやっていますので、こういう減収があると、払うべきものが払えなくなるおそれがあります。なんとか早めに騒ぎが終熄して貰えないかとじりじりしているところです。

(2020.2.29.)

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